此処は、何処だろう・・・?


真の物語は、始まりさえ予感させない。
ただ、静けさばかりが通り過ぎていくのだ。

何処かで降る雪があるならば、何処かで人知れず溶け始める雪もある。
誰の目にも触れないように。ひっそりと春を迎えるように。


私は、孤独の中で生まれた。
だから、私にとっての父や母は、あの沈んだ闇以外にはない。
人は闇を恐れる生き物だが、私の知っている闇は、決して人に害をなす存在ではなく、むしろ優しさと慈しみを与えてくれた、唯一の友であり、家族であり、恋人だった。


私は、誰よりも闇を理解している。形も匂いも何もかも。